浴衣のお嬢さん

今夜、お祭りでもあるのか、夕方近くのスーパーマーケットに買い物に行ったら、浴衣姿の若い女性がかなり歩いていた。

今年のはやりは、こんな感じか・・・と、ながめながらホテホテと移動していくと・・・、正面にやってきた高校生くらいのきれいなお嬢さんが2人。
ギョっとした。

左前!

ほぼ同時に気づいた店員さんと、ささやいた。
「まずいよ、それだと死に装束。」

近くの控え室で着なおしをさせてもらうことになったようだ。


普段、着慣れない和服を着ると、死んだ人に着せる左前に着てしまう・・・という笑い話は、よく聞くが、実際に見てしまうと、さすがにビックリしてしまう。

和服の場合、右手が胸にスっと入るように、襟を合わせるのが正しい。
男性でも、女性でも同じ。
洋服と違って、和服はだれもが、右前に着ることになっている。
左前に着せるのは、唯一、亡くなった人に死に装束を着せる時だけなのだ。

日本人の場合、圧倒的に右利きが多い。
昔は、今以上に左利きを矯正してまで右利きにしていたものだから、右手が簡単に懐に入れられる着方をすることになったのではないだろうか?

これを、せっかく自分で着物を着ようとする若い人が勘違いしてしまう理由として、
「着物は、右前に着ます。
襟が左前では、死に装束ですよ。」

という、教え方をしてしまう場合がよくあるからだろう。

この襟が左前はダメ」がくせものなのだ。
正しい着方をすれば、襟は、左側が前(外側)にくることになっている。
ところが、こういうセリフを聞いてきた人は、正しく着ようとして、襟の右を外側にしようとしてしまうのだ。
これが、大間違い!
勉強してきて、かえって失敗することになってしまうのだ。

わかっている人は、「左前に着てしまった時の襟の状態になっているよ」ということを言いたいのだろうが、これを省略して「襟が左前」では、混乱の元になるだけなのである。


さて、買い物をすませて、帰宅しようと歩いていると、小学5〜6年生くらいの娘さんたちが6〜7人楽しそうにやってきた。
どうやら、彼女たちも「祭り」に行くらしく、全員がかわいい浴衣姿である。

中に1人・・・左前

こっそり接近して、
「襟が反対になってしまっているので、そのままだと、死んでいる人になっちゃう。どこかで、なおせない?」
と聞いてみた。
いっぺんに大騒ぎである。

私の浴衣は大丈夫だろうか?
全員が見知らぬおばはんを取り囲んだ。
「右手がスっと入ればOKだよ」
皆さん、きっちり右手を胸の前に持っていって、大丈夫だと確認。
ちょっと、笑える光景である。

さて、左前に着てしまったお嬢さんなのだが、着付けをしてくださったのは、お母さんだったようだ。
これで、大丈夫だよ・・・と言われて、出てきたというのだが、これ、きっとそのお母さんは、普段洋服生活をなさっている方で、和服の着付けは慣れていない方。だれかから
「襟が左前になっては、いけません」
という表現で、着方を教えられてきたのではないだろうか?
だから、正しい方法で娘さんの着付けをしたつもりだったのに違いない!

やっぱりね、「襟が左前」という表現は、うっかり使わない方がいいと思ったわけです。


せっかくの素敵な浴衣も、死に装束ではガッカリである。
道の真ん中で、なおせと言われても、困ってしまうしねぇ。

皆さん、和服を着るときは、死に装束にご用心くださいませ。

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