ネズミ算の家

ネズミなどの出産周期が短めで、しかも多産の生物が、良い条件で放置するとどんどん増加してしまうことを表現して「ネズミ算」といいます。
実際の世界では、食物連鎖のおかげで、そうそう「ネズミの山盛り」ができてしまう・・・ということはありません。
言葉はよく知られていますが、実際に体験した人は・・・案外少ないのではないでしょうか?

生物界のバランスがどこかでくずれると、たとえば「飛蝗」(ひこう)のようにバッタの類が大発生して農作物に甚大な被害をあたえることになります。
たまたま前年の秋などに虫の卵が産み付けられたのに気づかず、春に大量の毛虫が発生。せっかく丹精した庭木がめちゃめちゃにされてしまった・・・こういうケースはありそうです。
とにかく、多すぎる生物というものは、恐怖感がともないますね。


我が家は、この「恐怖感」を懲りもせずに何度も体験してきました。
みんな私が悪いンです。汗

私は、ペットというか、小動物を飼うことが好きなんですね。
哺乳類に限らず、虫や魚、両生類・・・なんでもたいていOKです。
で、なんていうか・・・増殖しがちなんですよ。

ペットを飼育していて、それが番いである場合、子供が産まれるということは、飼育状況がよい証明みたいなものですから、自慢できることなのでしょう。
我が家で生まれた、かわいい子犬や子猫を、ほしがっている人に里子に出す。いいですね。
もちろん、飼育できる数には限界がありますので、出産制限とか避妊手術をすることもたいせつです。
我が家でも、猫を飼うことになった時、真っ先に考えたのは避妊手術の時期でした。
(ごめんね、我が家の猫ちゃんたち。そのかわり、がんばって面倒みるから)
なにしろ、いままで、何度、大失敗を繰り返したかわかりませんから。


最初は・・・なんだったでしょうか?
山ほどのスズムシやコオロギを飼育して、それらがリンリン、コロコロと鳴きだしたら、そのあまりの騒音に、夜も眠れない・・・・という、ヘマは、子供のころしょっちゅうでした。
実験材料だったヒキガエルの卵が大量にオタマジャクシになり(実験が終了したら、さっさと池とかに捨てにいけよ!)、さらにそれらが成長して(エサをやるな、放流してこいよ!)そろそろカエルになりかかった頃、
「どうしよう、カエルになっちゃう」(生物学専攻なら、知っていて当然。なにをいまさら・・)
実験をしていた部屋から押し付けられたガマガエルを多数飼っていたこともあります。

多すぎる生物の恐怖は充分味わっているはずなんですがねぇ。

セキセイインコを飼育したら、どんどん卵を産んで、増える増える。
せまくてはかわいそうだから、大きめのカゴにしたら、さらに増える。
巣箱があるから卵を産むのだろう・・・と、巣箱を取り外しても、カゴの床でちゃっかり増える。
あっという間の「インコ算」です。もらってもらえる人には、くばりまくりました。
確かこの時は、小学校の大きな小鳥小屋に寄付することになったと思います。

その次がハムスターでした。
お店でみかけたジャンガリアンハムスターにひとめぼれしたんです。
これ、両方ともオスですからね
ろくに知識がなくて、とても仲良しの2匹を買ってよろこんで育てました。ちょっと小型のハムスター。めっちゃくちゃ、かわいいです。
(仲良しのオス2匹・・・まず、この時点で気づくべきだったんですよねぇ。いま考えると。)
ある日、こどもが産まれていたんです。・・・メスじゃん!!

コミック「動物のお医者さん」の中で、獣医希望の主人公が獣医学部教授から「オス2匹」と言われてひきとったスナネズミが、やがて出産して増えてしまう・・・という話がありましたが、私は笑える立場ではありませんでした。
ええ、一応生物学専攻、動物行動学をやっていましたし・・・ハムスターの仲間のなわばりについて、ちゃんと勉強しただろう?自分・・・涙。

この時は、ジャンガリアンハムスターがまだ、珍しい時期でしたので、幸いなことに貰い手はすぐに見つかりました。よかったぁ。

教訓:ペットを買う時には、きちんと性別のチェックをしましょう。


次がまたまたハムスターです。
今回はゴールデンハムスター。
ちょっとしたハムスター・ブームだったんです。お店で見かけた子(?)が、妙にかわいかった。メスだけれど1頭飼いならば何の問題も起きるはずはありません。
皆でかわいがりまして、モリモリと食べてよく太ってきたんです。そして・・・ある朝、子供が生まれていました。
え〜〜っとぉ・・・・
ペットショップにいる間に妊娠していたんですねぇ。
お父さん、だれよ?!責任とってちょ〜だい!
ハムスターは、成長するとなわばり意識が高く、1つのカゴに1匹ずつ飼育することになります。増えたら増えただけカゴが並ぶ・・・いや、この時は、かなり苦労しました。

教訓:なわばり意識が高く、1頭飼いをすることになる生物は、むやみに繁殖させてはいけない。

ペットとしては、日本ではあまりお店に並んでいることがありませんが、スナネズミという、たいへんに可愛い動物がいます。ネズミの尻尾は毛がはえていなくて、見ようによれば「ミミズ」かなにかのようなのですが、このスナネズミは尻尾にも毛がふさふさとはえています。
性質もおとなしく、人によく馴れます。なわばり意識がさほど高くないので、1つの入れ物で多頭飼いができます。
ある日、ほしくなっちゃったんですよねぇ。笑

当時、私がいた職場には、いろんな実験動物がいました。スナネズミはある種の研究材料としてよく使われる動物でもありました。研究の関係であまった各種の動物をペットとして飼うことにした研究者は、けっこうあります。私がほしがっているという話を伝え聞いて、N教授が
「ちょっと歳よりだが、スナネズミをあげよう」
と言ってくださいました。実験用のあまりとかではなく、ペットとして飼っていらっしゃった個体だったようです。たいへん人に慣れたオス・メスのペアで、よろこんでもらってきました。
「歳寄りだから、たぶん子供はできないだろうけれどね。」
できちゃったんです。
仲良し親子のスナネズミは、しばらく我が家でよりそって暮らしていました。

そんな、ある日・・・
N教授から声がかかりました。
「またスナネズミなんだけれど、引き取り手をさがしているんだ。」
教授宅で2匹のスナネズミが飼われていたのですが、お嬢さんにアレルギーがでてしまったために、手放すことになったのだそうです。それで、以前にスナネズミをもらった私に話しがきたんですね。
飼育しやすいことがわかっていましたので、すぐにもらうことにしました。

ここがスタート地点です。

我が家には、結婚適齢期の若いスナネズミが3匹ほどいました。新しい個体は・・・若かったんです。
・・・・・・すごいものですね。捕食される個体がいない場合、ネズミの類の増殖スピードがこんなにすさまじいものとは思っていませんでした。
スナネズミのカゴがずらりと並びました。
これ以上、繁殖させてはとんでもないことになる・・・オスとメスをわけて、カゴに入れたわけです。
よし、これで大丈夫。

「大丈夫」宣言をしてから、どれほど日数がたったでしょうか?娘が言いました。
「また、スナネズミが子供を産んでるよ。」

がぁ〜〜ん!!

そんなはずはない。
産まれていたんです。
原因は完全に私のミス。雌雄を分けた時に、かなり子供だった個体の判別を間違えていたのですね。(いや、ちいちゃいスナネズミのオス・メスって、わかりにくくありませんかぁ〜っ!!)
家族の白い冷た〜い視線が背中につきささりましたとも。

全部でスナネズミは40匹になっていました。
いくら1つのカゴに複数を入れることができるといっても、40匹のスナネズミと生活した一般人は・・・・・そうそういないのではないでしょうか?

教訓:いいかげんに、懲りるということを覚えるように!!

かつて、日本の空には「トキ」という名のたいへんに美しい羽色をした大型の鳥が群れをなして飛んでいた時代があったそうです。
今、純国産の「トキ」はいません。
「トキ」を絶滅から守るために、たいへんな努力がされたと聞いています。残念ながら、その努力は実をむすぶことがありませんでした。
もし・・・ほっておいたら、なんでもやたら「増えてしまう」我が家の近くに、この「トキの保護センター」があったとしたら・・・我が家からの「増えろぉ〜増えろぉ〜」電波?が影響して、絶滅することはなかったのではあるまいか?
つい、こんな、しょうもないことを考えてしまうのであります。

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