秋桜の背丈のこと

秋桜(コスモス)・・・私くらいの年齢だと、さだまさしさんが作って山口百恵さんが歌った「とついで行く娘とその母」の姿が目の前に見えるような名曲を思い出してしまいます。

私は子供のころからコスモスという花が好きでした。たいてい毎年、秋になると花壇のどこかに白とピンク、濃いピンクの3種のコスモスが咲いていたものです。
実は、この植物、たいへんに繁殖力がつよく、花の後にはいっぱい種ができます。これが撒き散らされれば、毎年同じ場所に生えてくることになっていたんですね。そして、ちょっとやそっとのことではビクともしない強さをもっています。
背丈が高くなるので、夏〜秋に台風が通過すると、暴風雨になぎたおされて簡単にひっくり返ってしまうことがあります。しかし、ひっくり返っても平気。頭をひょいと持ち上げて、何事もなかったかのように花をさかせるたくましい植物でした。
「植物の茎はたおれても、やがて上に向かって伸びる性質がある。根は、地面に向かって下方向に伸びようとする性質がある」
という「屈地性」「屈光性」などについての理科の勉強があるときには、「台風でひっくりかえったコスモス」が、小学生相手の好例として説明に使われたものでした。それくらい、どこにでもある植物だったからでしょう。

かつて、花壇などに植えられている植物の背丈は、バラバラなものでした。
見上げるくらいのっぽになって、でっかい黄色い花を咲かせたヒマワリ。
ひっくり返りやすいけれど、たおれなければ1メートル以上になるコスモス。
大きくなる植物と、普通の背丈の植物と、小さな植物が入り乱れていました。

花の大きさもさまざまでした。
大きくて豪華な花。小さいけれど、いっぱい咲き零れる花。
それぞれに特徴があったものです。

近年、集合住宅に住む人々にとって、あまり背丈が高くなる植物はベランダなどでの栽培がやりにくい・・・という理由からなのか、いろんな植物の「矮性化処理」とでもいいますか・・・背がひくいままで花が咲くものが多くなってきています。
本来ならば、ドーンとのっぽになってから、そのてっぺんに花が咲く植物が、30センチ程度の高さでドンドン花をつけていたり、ツルで伸びるはずの植物が、ほとんどツルがのびない状態で花を咲かせていたり・・・とっても不思議な世界になってきています。

花のサイズも変化しました。
大きくて豪華な花が好まれるようになってきたのか、園芸品種には、もとの形が想像できないくらい大きくてりっぱな花をつける植物がみられるようになりました。
ひとえが当たり前の植物に、いつのまにか「八重咲き」が登場したり、1本の茎に、おどろくほど多数の花がつくように改良されたものもあります。

これらは、需要と供給の結果ですから、文句をつけることではないのでしょう。
おそらく、植物の改良のためには、たいへんな努力がはらわれているのだろうと思います。新しい園芸品種が登場することは、花を楽しみたい人にとって、うれしいことだと思います。

ただ、時々ちょっと残念な気分になります。
たとえば、秋の公園で見た風景。
花壇に30センチくらいの背丈のコスモスが、それは美しく咲き乱れていました。
ちっちゃなかわいい秋桜の群れ・・・・。
なんか、私のイメージの中の秋の風景ではないのです。
多少、たおれたりしてお行儀が悪くても、のっぽのコスモスが秋風にそよぐ風景は、もう見られないようになっていくのでしょうか?
ひろびろとしたスペースがある公園の花壇ならば、昔ながらの普通サイズのコスモスを植えてもいいような気がします。
まだ、あまり多数の園芸品種がなかった時代に子供時代をすごした私のノスタルジーにすぎないのでしょうかねぇ。

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