蛇がのびる話

私が卒論を書くためにお世話になったのは、東京の上野動物園です。
当時、上野動物園の西園の一角には水族館の建物があって、そこにはワニ、亀、蛇をはじめとする爬虫類も展示されていました。
私は西園の飼育係員の部屋にいたわけですが、そこには水族館の飼育係りの人も時々やってくることがありました。彼は、たいてい大きな分厚い布袋を持っていました。中身は・・・ハツカネズミ。多くの爬虫類の生餌だったわけです。
両生類の生餌には、コオロギなどの昆虫が利用されることが多いのですが、大型の両生類ともなると、小さめのハツカネズミが使われることもあるようです。したがって、布袋の中には、大小さまざまなネズミがうようよとしていました。

私は生物専攻の学生でしたから、虫もネズミも両生類も爬虫類も・・・たいてい平気です。
まぁ、日本には、ごく1部をのぞくと、むやみに怖がらなければならないような生物がいなかったからでしょう。マムシにでも出くわせば、さっさと逃げ出しますが、一般の蛇がいても、悲鳴をあげることはありません。トカゲ、カナヘビはわしづかみOK。頭の上にヤモリが落下しようと、平然とつまんで逃がす人でした。

水族館の飼育係員さんからは、いろいろの話を聞くチャンスがありました。
飼育係りが毎朝出勤すると、まず最初にすることの1つは、自分が担当している動物の健康状態のチェックです。体調が悪くても自分でつげることができない動物が相手ですから、動作、毛づや、食欲・・・いろんな方面から病気の有無を確認することは、大切な仕事なのです。
では、問題です。笑。爬虫類、特に蛇を担当する人は、どこを重点としてチェックするのでしょう?
答えは、トグロの巻き方なのだそうです。
蛇は、種類によって、いろいろの形のトグロを巻きます。その特徴あるトグロがきちんと巻けている状態であれば、体調がいいことになります。具合が悪い場合には、うまくトグロを巻けないのだそうです。
人間は気分がよくないと「のびたぁ」とか言いますが、蛇もトグロがのびてしまうわけですね。
日本の蛇は、たいていおなじみのクルクルっとまいたトグロですが、ニシキヘビなどのトグロの基本形には、ずいぶんと見た目が疲れそうなものがあります。まるでボールみたいなトグロを巻く蛇も見せてもらいました。きっちりとボールを作るようにしたら、ものすごくたいへんそうな気がするのですが、彼らにとっては、それが健康な状態。いい気分で巻いているんでしょうねぇ。笑

特別「病気」というわけではなくても、人間「のびる」場合はあります。
真夏なんかは、「だれる」というか「バテる」というか、なぁんにもしたくなくなる場合があります。
これ、蛇にもあるんですね。笑

私が就職したばかりの頃、建設途中で自然に満ち溢れていた岡崎の国立研究所の敷地内には、いろんな蛇が住んでいました。エサが豊富だったこともあって、彼らは実におとなしく、人間なんかなんとも思っていない感じでした。悠々自適ヘビです。
気温が高くなると、そこいらの木の枝からダランと紐が垂れ下がります。夏バテしたヘビが「やってられるかぁ」と、のびているのですね。トグロなんて巻きません。だれだれです。
うっかり歩くと、この「のびた」ヘビに首がひっかかりそうになる。ヘビで首をつったのではシャレになりません。
う〜ん、あれは、やめてもらいたかったかなぁ。







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