レッド・サン(なんかいろいろ文字変換してもあてはまりそうな・・・)



 今頃ナンだけどサぁ、オレ、10年間も何見てきたんだって思ってるわけヨ。
いや、今そこで眠りこけてるおっさんのことなんだけどさ・・・。

 ガガゼトを越えて、オレが自分のことを全部知るハメになって・・・ユウナレスカに会ってスピラの真実ってやつを知らされることになって・・・ようやっと、おっさん手の内明かしてくれるようにはなったんだけどサ、ほれ、もともと一番肝心なところで言葉が足りない男だろが。
(つうか、ひょっとしたらオレらのために黙ってたっつうより、ちゃんと筋道立てて説明することが不得手なだけだったんじゃないかって疑問がないわけじゃないんだけどね。)
まァ、なんだ、オレ、おっさんの告白を聞く前から、なんとはなしに、おっさんの正体がわかってはいたように思うわけ。

だいたいさ、子供の頃の記憶って相当いい加減なものがあるにしても、オレが初めておっさんに会った時、おっさん今とそうたいして変わんない姿してたんだぜ。
(正直ビビったって。右目断ち切った傷跡といい、ドス効きまくったしゃべり方といい、あれで目の前に立たれて「お前がティーダか?」っつって言われてみな、こっちは7歳のお子チャマなんだぜ、オレでなくたってさチビリそうに怯えて無理ないと思うんだよな。うん。以来10年、おっさん ろくにトシとらないんでやんの。いくら死人だからって、少しは時間の流れとか考慮にいれろよな。)

だから、わかるだろ?マカラーニャ以来、親父達の残したスフィアを見つけるようになって、オレ、ブッとんだんだ。この赤い服の兄ちゃん誰ってサ。
オヤジやユウナの父さんが「アーロン」って呼んでいるわけだから、おっさんなんだろうけど・・・オレの記憶の中で共通してるのは服だけっス。
う〜ん、じっくり見てると行動パターンは、あ〜、おっさんだなァってわかるんだけど、この年齢の異常はなんなんだァ〜って。考えるだろ?誰だって。

できれば、あの赤い服の兄ちゃんの姿で来てほしかったよなァ、オレのザナルカンド。いや、マジで。


 それから、いろいろあって、出会いやら別れやらあって・・・自然にたどり着いた結論がアレ。このおっさんも、シーモアやマイカさんと同じなんじゃないかって・・・ま、なんとなく言葉に出すのはヤな気がして、とうとうオレからは切り出せなかったんだけどさ。

で、ユウナレスカ倒した後で、告白されて、親父達との記憶とかも見せられちまうとさ、オレもそれをベースにしていろいろ考えちまうってこと。おっさんの何気ないしぐさとか、ちょっとした言葉尻とか・・・。
もしかして、おっさんの頭の中にはずっとユウナの父さんとオレのオヤジのことしかなかったんじゃないかって。キマリ顔負けでユウナのガードに専念する姿の裏に、ユウナじゃなくて亡くなったブラスカさんの姿を重ねてるんじゃないか・・・頭ごなしにオレを怒鳴りつける時に、オレを通してオヤジを見てたんじゃないかってさ。
それって悲しいよな。・・・でも、オレ文句言えなかったんだ。
魔物捕獲にあちこち出かけていくと、おっさん時々遠い目をして何かボンヤリしてることがあったからさ。きっと10年前親父達とここを通って、思い出とかもあるんだろうなァってわかっちゃうだろ。そんなん見ちゃうとさオヤジの代理でも許してやるか・・・って、ついつい勝手に考えていたわけ・・・昨日まで。


 一昨日の夕方だったんだけど、ミヘン街道旅行公司のロップがたまたま用事で飛空艇に来ていて、聖印さがしでメゲまくっている技術者のグチを聞いていたんだよ。そン時ロップが、まだ砂漠にホームがあった頃の話ってやつを思い出して、数打ちゃ当たるかもしれんのなら行ってみたらって言い出したんだ。
なんでもホームのあった場所から、ちょっと南東に行ったところに、不思議な地形の場所があって、岩場から覗いてみるとサボテンくらいしか生えていないんだけれど、やたら砂嵐がひどくってちょっとやそっとでは立ち入ることができない所なんだとさ。でも、極まれに砂嵐が止むことがあって、ロップはその時一度だけ覗いてみたことがあるんだって。中は柱状サボテンっていうの?やったら背の高いタテ長のサボテンが林のように突っ立っていて、その一角で妙な光る物を見たように思うって言うんだ。

え?なんでロップはそれを確かめてこなかったかって?そこは、サボテンダーの巣になっているらしくって、とても見学して回れるようなところじゃなかったんだと。まァ一般人にとってはサボテンダーって危険極まりないわけだよな。

 で、こりゃ 間違いなく行くことになるんだろうな〜ってワッカとだべっていたら、翌朝、即ちゃっかり聞きつけてきたリュックが、行こう行こうって聞かネェの。見ると、あっちでシドさん ため息ついてるし、そっちじゃアニキ、おっさんの手にぎりしめて必死に拝み倒してるし、技師達期待してオレ達を見つめてるしさァ、行かないわけにいかんじゃん。


 というわけで、オレ達はビーカネル島に飛んで、サヌビア砂漠のオアシスに降ろしてもらったってこと。

 あの、くそ暑い砂漠を歩かされるわけだから、どうせならっていうんでオレ達は魔物捕獲用の武器装備して、水筒バッチリ持ってさ、あ、ルールーが
「地虫はいや!!」
って言うから、サンドウォーム対策としておっさんだけは正宗装備ね。
オレ、いまだにわかんねェんだけど、あんな食い物に困りそうなだだっぴろい砂漠に、なんでサンドウォームだとかズーだとか、何食ったらそんなにデカくなるんだっていう魔物がウヨウヨ住んでるっスかねェ?共食いしてるんだろうか?

 それは、おいといて・・・

 ロップから聞いていた場所のあたりに行ったらなるほどすさまじい砂嵐が吹いていて、入れそうな様子は0。しょうがないから、どこかに別の進入経路でもないかと探していたら、妙な石碑が立っていたっス。砂漠に突っ立った石碑だから、書いてあることはろくに読み取れないンじゃないかって心配したんだけれど、意外に文字ははっきりしていて・・・でも書いてあることはチンプンカンプン。
なにやら「門番の唄」ときたもんだ。なんだァそりゃ?!
でもって「のんびりトーメは水くみに」だってさ。???これ、わらべ唄か何かかよ?ひょっとして、他にも3つ4つわらべ唄があって、それに見立てた恐怖の連続殺人事件とか起こっちゃうわけ・・・ほんで、名探偵・金田一耕助さんとかが御登場あそばしてって・・・ちっが〜う!!どこの世界の話だっつうの!!

 まぁ、水汲みができそうな場所に行ったら何かわかるかもって考えたんだけど、どう考えたところで、砂漠で水が汲めそうなところってオアシスくらいしかないわけじゃん。オアシス・・・オレ達そこから来たんだってば!!(泣)

しょうがないからホテホテ振り出しにもどったわけ。すると、いたんだこれが。サボテンダー。
おおっ、バトルかァって構えたんだけど、どうも様子が変なんだよな。なにやら身振り手振りピキピキ言ってるんだけど、サボテンダー語の辞書なんてさすがにどこにも落ちてないって。
どうしたもんかと思ってたらキマリがいつの間にかサボテンダーの前にしゃがみこんでさァ、すっげぇ真面目な顔してじぃ〜っと見てるわけ。何やってるんだって聞こうとしたら、先におっさんが
「どうだ?わかるか?」
って言うんだ。わかるか〜って、キマリ、サボテンダー語知ってるのかよ?!オレはぶったまげたんだけど、どうやらマジでわかるらしくってさァ
「はりはりまんぼんというゲームをやりたがっている。」
って、キマリが通訳してくれるの。
いや、完全にわかるってことじゃないらしいんだけど、この際おおよそでも相手の言ってることがわかれば、御の字だよ。うん。

 で、そのゲームをやってオレ達が勝ったらいい物をやるって言ってるらしいんだ。

 「はりはりまんぼん」っていうのが、どんなゲームかっていうと、「ダルマさんが転んだ」っていう子供の遊びに似ているんだ。けれど、サボテンダーは言葉に出して数を数えたりはしてくれない。とにかく、後ろを向いている間だけは動いて良し。オレ達を振り返ってる間は動いたらダメ。それで決まった時間内にサボテンダーのところまで行きつけばオレ達の勝ちってわけだ。
挑戦されて受けないんじゃ男が廃るってもんだろ?

 ところがこれが結構ムズいんでやんの。なかなかコツがつかめないし、なにしろ制限時間ってのがやたら短いときてる。つごう3回チャレンジしたけど結局ダメ。サボテンのやつ、スフィアを1つ残すとどっかへ行っちまったんだ。
キマリが言うには、もらったのは「敗者のスフィア」というもので、そいつを例の石碑にささげれば次のゲームにチャレンジできるようになるらしい。もちろん勝っていれば別のスフィアがもらえたってことなのだろうな。

 で、オレ達は、またエッチラオッチラ石碑まで行って、そのヤな名前のスフィアをそれっぽい窪みにはめ込んでみたんだ。そしたら、驚くじゃないか。どういう仕掛けになってるのか石碑のわらべ唄みたいな文字が別の文字に変わったんだ。
ロビビアは寄り道中」だってさ。なんかゲームをやりたがるサボテンダーは10人いるらしいから、そのロビビアってのは次のサボテンダーの名前なんだろうけれど、寄り道ってなんだよ。だいたい、どこ行く途中の寄り道っつうの?!捜したさ。やっとめっけてゲームやったけど・・・惨敗。

 引き返してスフィアはめたら、今度は「小さなチャパは大きな数字が好き」だってさ。もうちょっとわかりやすいヒントを出せってば!!
 なんかリュックが
「リンさんが昔砂漠に立てた看板にいろいろ数字が書いてあった。」
って言うから、そこへ行って・・・また負けて・・・もう、ムッカ〜〜!!!

 なにが敗者のスフィアだよ!敗者・敗者・敗者・・・オレは1本も虫歯なんかねェっつうの!!このところ特に念入りに食後の歯磨きしているし・・・あ、笑ったな。別にオレ、この間キマリから聞いたガガゼトの十円ハゲゆうれいなんて間に受けたりしてないよ!!本当だって!!え?違う?あまりのオヤジギャグに笑った?大きなお世話だ。

 もう、砂に足とられるわ、日差しは強いわ、そん中での往復行動ってメチャきつ〜。内心ヒーヒー言って捜してるってのに、次のアレクとアロヤときたらバタバタバタバタ追いかけっことかで、何が楽しいんだか砂の海を走りまわってやんの。脱水症状おこして死ぬぞって。つくづく魔物の考えることってわかんねェ。
で、ようやく半分だよ。

 あ、途中でルールーが足くじいちゃってさ、なんか砂に覆われて見えないところにぶっ壊れたキカイの破片かなんか埋まっていたようで、それに足ひっかけちゃったらしいんだ。ルールーの靴、砂漠むきじゃないしさ。すぐユウナが回復魔法かけたんだけど、
「いくら魔法で体力だけもとにもどせても、痛みは痛みだし、受けたダメージは目に見えない疲労となって蓄積されていくのよ!」
とか、お小言くらっちゃって、ルールーったらユウナ連れて一足先に飛空艇に帰っちまうんでやんの。おいおい・・・。
まぁ、考えてみたら、アルベド・ホームで砂漠慣れしているリュックがむしろ例外で・・・こんなところ女の子ひっぱりまわす方が間違いっちゃ間違いだよな。ルールーはユウナが疲れているのを見て取って先に帰ってくれた・・・そういうことだったんだろうよ。

 で、次のヒントは「青い光」。へっ、こいつならわかりやすいや。いつも使わせてもらっている移動用のポイントは確か3箇所くらいあったよな〜って思っていたら、リュックが、
あれ、すぐ砂に埋もれちゃったりするから、実はもっとあっちこっちにゴロゴロ設置してある〜
なんて血の気が下がるようなこと言い出すじゃん。
うそォ!
正直こん時は泣きたくなったぜ。
幸いそんなに捜さなくても見つかったんでよかったんだけど、石碑にスフィアはめ込んだ頃には、もう しっかり夕方。日が落ちると砂漠ってのは急激に温度が下がってウロウロしてたらヤバイってリュックが言うからさ、続きは明日ってことで一度帰ることにしたんだ。


 西の空は怖いくらいの夕焼けで、オレずっとザナルカンドにいたら、こんな景色も知らずに終わったんだろうなァって感動していたら、リュックがちょいと方向違いの方を見てボンヤリしてる。そっちじゃないだろって声かけそうになって・・・思い出した。リュックが見ていたのは、今は消えちまったホームの方向。あそこでリュックは大勢の仲間を失ったんだ。オレが海の神殿で出会ってずいぶん小突かれたアルベドの兄ちゃんも、あの時魔物から召喚士達を守って・・・今はあそこに眠っている。



 今日出かけてきたのは5人で・・・案の定ユウナはルールーに引き止められて飛空艇でお留守番ってわけ。出掛けにルールーからわざわざ呼び止められて
いい、正宗の特性に頼ってばかりじゃダメなんだからネ!
って、しっかりクギを刺されてたのに、オレ、実はよくわかってなかったんだよなぁ。

 昨日読んでおいたヒントで、捜す相手は何かに閉じ込められてるっていうんで、一度チェックした覚えのある宝箱とか、もういっぺん確認しながら歩いてたら、いたいた、7番目のサボテンが箱の中に。・・・でもさ、こいつ、もしオレらが捜しに来なかったら、どうするつもりだったんだろう。まちがいなく箱ン中で干物になってたと思うんだよなァ、オレ。

 次のヒントも、こんなんヒントかっていうような物だったけど、まァ確かに穴の中にサボテンはいたわけで・・・もう哲学でも何でもやってろって感じだった。

 問題は、次のエリオってヤツ!!
好奇心旺盛なエリオは旅立った」って、なんだよそれェ?!オレ、サボテン探してこれからスピラ中駆け回らなくちゃいけないのか〜って本気で考えちゃったんだぞ。皆で、あ〜でもない、こ〜でもないって考えても、ちっともまとまんなくて、昼飯食って頭冷やそうとオアシスまで戻ってきたら、いるんだよ、サボテンダー。アッと思ったら、そいつ生意気に移動装置使ってブンって消えちまいやんの。が〜ん。それから大騒動。後追っかけて飛空艇に移動して
サボテン、どこ行った〜
って艇内の捜しまくり。つくづく広いんだわ、この艇。乗員全員ドタバタジタバタ・・・ようやっと見つけたのが、なんと甲板の上。よくまぁ風に吹っ飛ばされずに乗ってたもんだと思うよ、オレ。
で、まァ、またコリもせず敗者のスフィアもらってさ・・・笑うんならやってみろよ、ムズかしいんだから。え?オレが、ニブイだけだって?ふん!!

 エリオが9番目だから、残るのは後一体。魔物蹴散らして石碑にたどり着いたら10番目は「いつも うしろ」にいるらしい。うしろ・・・振り返ったら本当にいるんだ。お前ストーカーなのか?!サボテンダーのストーカー、むちゃくちゃイヤかも。

 んで、最後のスフィアをはめ込んだら、あれほどすさまじかった砂嵐が治まっていって、なんとか例の窪地に入れそうな感じになってきた。こうなると、今までの疲れだってふっとびそうな気がして、オレらはそのサボテンダーの巣になっているっていう空間に入って行ったんだ。
いや、出るワ出るワ。本当、サボテンダーの巣。あいつら、もしかしてあそこでポコポコ生まれてくる魔物なわけ?

 とても全部相手していたら身がもたないから先を急いだんだけど、治まったといっても砂嵐が完全に消えたというわけではないらしくて、時々突風が砂を巻き上げて、もう動きにくいことこの上なしなんだ。たぶん、みんな同じだったと思う。だから・・・

    気がついた時には相手の射程範囲に入り込んでいて・・・




 とてつもなく、でかいズーだった。最初にすさまじい衝撃波がきて、あわてて剣を持ち直した時には、目の前にヤツの黒光りするツメがせまってた。

 やられる!!と思った。よけられなかった。でも、痛みはこなかったんだ。

 オレはその場にすっ転んでいた。
オレがいたはずの場所にはオッサンが立っていて、風にあおられた赤い服が翻って・・・正宗がズーの身体を斜めに断ち切るのが見えた。ズーがスローモーション見てるみたいに大地にたたきつけられて、そこにほとんど同時に投げつけられたらしいワッカのボールとキマリの槍がヒットしたとたん、一面に光が舞った。ズーだったものが幻光虫になって四散していく光・・・オレ、その中で初めて見たんだ。おっさんの手から太刀がすべり落ちるのを。何が起きているのかわからなかった。まるで朽木がくずれるように、おっさんの身体がゆらいで倒れていく時も・・・たぶん、オレ、わかりたくなかったんだよ

 リュックが何か叫んでいるのが聞こえて、さすがに我に返ったら、おっさんを抱きとめたキマリが、ポーションかなんかの小瓶の蓋をとって、無理やりおっさんの口に流し込んでいた。
しばらくして、おっさんが薬を飲み込んだらしくて、キマリはワッカに二言三言告げて立ち上がった。

 ワッカがオレのところにきて、落っことしていた剣を拾ってくれて
「ケガしてないか?」
って言うんだ。
違うだろ?!
あわててキマリを追っかけようとしたら、ワッカに差し止められた。
「キマリが飛空艇に連れて行く。オレ達は別行動で、この窪地の探索だ。」
「おれは・・・!」
「落ち着け。こんなことは、よくあることだ。後はキマリに任せておけばいい。」
「こんなことって!!」
「あ〜、今回は、その、俺らもダメージ量の計算をミスってたみたいで、後でルーあたりからしぼられそうだが、お前のせいじゃないから。」

さすがに状況が飲み込めてきていたさ。
昨日、今日と砂漠を駆け回って出くわす魔物とのバトルもイヤってほど繰り返してきてた。皆、言わないだけで疲れきっていたに違いないんだ。それでも、おっさんは大型の魔物に出くわした時のために、承知の上で体力回復を充分にはやっていなかったんだろう。なのにオレがさっきヘマやって逃げそこなったから、かばって・・・オレのかわりにケガして・・・

 リュックには悪いけれど、オレその時、もうアイテムも聖印もどうだっていいような気がしてたんだ。このまま飛空艇に帰りたい。帰って文句の一つもたたきつけてやりたい。なんで、そんな状態でオレかばったりしたんだよって!!

そしたら、ワッカに言われちまった。
「いい歳してベソかくんじゃないって。」
「泣いてない!」
「ハイハイ。リュック、お前も一応聞いておけ。本来ガードの仕事というのはこういうものなのだ。」
「・・・・・・・。」
「召喚士を守るためには身を挺してタテになる。いわばガードになる人間の覚悟ってやつだな。計算なんてありゃしない。反射的に身体が動くんだ。だから、お前は責任を感じたりしなくてもいいんだ。アーロンさんは、お前を守りたかった。それだけのことなんだ。」
「でも!・・・オレは召喚士じゃないし・・」
「おいおい、何言ってるんだ。そんなもん、お前が大切だったからに決まってるじゃないか。」

ワッカの手がポンとオレの肩に乗せられた。
「こういう時は、黙って守られていればいいんだ。相手はそれで満足なんだから。」

そうなのかな?
オレ混乱ぎみだったしさ、よくわからなくなってきていたんだ。
そしたらリュックが、きっぱり言い切ったんだ。

「ヤダよ。」
「ん?」
「あたしは、そんなのはヤダ。そっちは満足でも、守られて怪我されたり死なれたら、残されたこっちはたまらない!うんと強くなるんだ。自分のこと大事だって思ってくれる人には心配かけなくてもいいくらい、うんとうんと強くなる。強くなりたい!
「・・・あぁ、そういうのもイイかもな。じゃ、まずは今回の目的、チャッチャと探し物があるかどうか調べに行くか。」
「うん!!」

オレ、リュックって強いなって思った。

「あのな、おれ、人にはそれぞれ限度ってもんが厳然としてあると思うんだ。自分なりに、その時すべきことできることを充分こなしていたら、もう胸はってていいんだよ。お前はガンバっている。俺達皆知ってるから。」
きっと、ワッカはさっきキマリから、パニクってるオレのことを頼まれていたんだろうな。気つかってくれているワッカの言葉がうれしかった。

 飛空艇に帰ると、移動装置のところにアニキが待っていて、キマリがおっさんを部屋に連れて行ったって教えてくれた。
走っていったらドアの前にルールーが立っている。
なんかピリピリした表情してるから、もうてっきり雷が落ちると思い込んだんだ・・・でも、違ってた。ルールーはオレのところへ駆け寄るとアチコチ手早くチェックして
「ケガしてないね。大丈夫だね?」
って言うんだ。
オレがうなずくと、よかったよかったって何度も何度もうなずくんだ。
オレ、後になって気がついたんだけど、ルールーも、かつて同じような経験をしてきていたはずなんだよな。ギンネムさんって人のガードをして旅をして・・・でも、ルールーは、その人を守ることができなくて死なせてしまった。ルールーはその時どんなに悲しい思いをしたんだろう?やりたいと思ったことができなかった苦しみをルールーは身をもって体験してきたんだ。ルールーはやさしいから、できることなら、もう誰にもそんな苦しみをさせたくないと思ってたんだろうな。今回オレに何かあったら、おっさんはきっと同じ思いをする。だからルールーは何よりもまずオレの安否を確認したかったんだろう。

 そして、ルールーの知っている苦しみは1000年もの間、数知れないガードと召喚士が繰り返してきた苦しみなんだよな。たった4人の召喚士の他は、みんなその苦しみ悲しみのはてに消えていった。その4人だって最後に矛盾と疑惑とほんのちょっぴりの希望の中でスピラの死の螺旋に飲み込まれていったんだ。オレ達が、これからやろうとしていることって・・・すっごく重い歴史の上にあるんだな。
なんかオレ、わかったような気がした。

 ルールーが言うには、さっきユウナがおっさんに回復魔法を重ねがけしてくれたから心配することはないんだけれど、傷そのものはかなり深かったらしくて、たぶん今日明日くらいは、ひどく痛みが残るだろうってことだった。
それで薬を使って眠らせてあるから、今話しはできないって。
部屋に入るのなら静かにしていろって。

 部屋にはユウナとキマリがいて、ユウナはオレを見ると、いつもと変わらない様子でニッコリ笑ってくれた。それ見て、オレ、やっと安心したんだ。

 部屋狭いからさ、いつまでもかたまっているわけにもいかなくて、皆三々五々自室に戻っていった。
ユウナが、
「もし、熱が高くなるようだったら使ってね。」
って、小さな薬の包みを置いていったけれど、この分なら使わなくてもすみそうかな?

ん?オレ?
こんな時くらい親孝行の真似事しとかないと、後でおっさんから何言われるかわからないじゃん。今日はここに泊まるっス。

なぁ、オレ、オヤジの代理じゃないよな。
よく考えたら、おっさん、だれかを通して別の人のことをそっと思うなんて器用なことできる男じゃねェもん。おっさんの感情表現ってもっと単純じゃん。
オレさぁ、もっと うぬぼれてても、いいんだよな?って、おい、帰るの?返事聞かせてくれよ。
・・・ま、いいか。たまにはオレの部屋にも来てくれよな。


 空間がゆらいで、青い少年の姿がどこかに溶け込んでいった。

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