泉のちょいと向こうにて


「旅・・・、続けるよ」
信じてきたエボンにうらぎられ、傷心のままに撤退したマカラーニャの森。澄み切った泉の中で信じるに足る若きガードの青年に、静かに、しかしきっぱりと言い切った気丈な乙女。
「もういい、ゆっくり・・・やすんでおけ。」
多くを語らずともすべてを察する年長者のいたわりの言葉を耳に、パーティは各々の休息の場に散って行った。


泉に向かい微動だにせず立ち尽くしていたキマリは、ゆっくり近づく足音に気がついた。
「眠れないのか?」
つぶやくような言葉だった。
「10年見守った。ユウナは強くなった。」
「・・・感謝する。」
自分よりひとまわり小柄な人間の漢は、隣に立つと泉のほうに身体をむけたままそっと頭を下げた。
「妹のようなものだった。その妹をヨメにだすような気分がする。」
「・・・・・・・・。」
漢は腰に手をやると、たずさえているNOGをさしだした。
「やるか?」
キマリは小さくうなづいてみせた。


「ティーダはやさしい!そしてェ、誠実だ!だが惜しむらくはァ、若い!」
(おい、もしかして、お前・・もう酔ったのか?)
アーロンは妙に多弁になったキマリを不思議なものを見るように思った。

「落ち込むユウナを力づけようとしてぇ、精一杯がんばった!心をこめて語りかけた!それはイイ。そこまではぁイイんだ!」

(いや・・・あのな)

「語りかけたあげくにぃ・・・泣かせた!」

(〜〜〜〜〜〜)

「で、どぉ〜しようもなくなってぇ、とりあえずキスした」

(それを言っちゃおしまいだろうが・・・)

「結果オ〜ライだがぁ、こりゃぁオトコとしてなさけないだろぉ?!」

(だから、それをオレにふるなよ・・・)

「アーロン!」
「はい。」
「お前は漢だ!キマリは心から尊敬している!だが、子育てはへただ!」

(・・・・・・・)

「なぜ、この日に備えて女心の機微をちゃんと教えておかなかったンだ?!」
(む、無茶を言うな・・・)

「そもそもアーロン!お前自身、女心ってやつがぁ、わかっているのかぁ?!」

絶句。

小さいけれど巨大な獣人は、そこまで吼えると徳利をわしづかみにしてグイとあおった。そして、ピタリと動作が止まる。
(?・・・おい・・・どうした・・・キマリ)
反応がない。
(・・・?・・・)

キマリの手から徳利がすりぬけ、カシャンと音をたてて地面に落ちた。それに気をとられた次の瞬間、アーロンの視界は暗黒に染まった。



ガードの心得そのままに重装備をつけたフサフサ毛皮の獣人は、勢いを殺すことなく倒れ掛かり、尊敬するはずの先輩ガードの身体をおもいっきし押しつぶしたまま高いびきをかき始めてしまった。

眠った子供をおんぶした経験があるだろうか?人間でも寝ていると重い。ムッチャクチャ重い。まして重装備付のロンゾ族は・・・ただごとではなかった!

「お、起きろ、キマリ・・・重い・・・」
大地に文字道理ぬいつけられたアーロンは、ジタバタする以外みちがない・・・(涙)


「おっちゃん・・・ナニやってるの?」
能天気な声がした。
「あぁ〜〜、もしかして、キマリとデキてるの?!」
「どこをどう見たら、そ〜いうセリフが出てくるンだ、リュック!さっさと そっち側ひっぱれ!」
「へいへい」
もう、「おおきなカブ」状態。
しかし、非力な少女一人が加わったところで どうなるというものではない。

「もう〜、なぁにやってるっスかぁ、夜中にぃ」
半寝ぼけの「とりあえずキスした男」登場。
「あぁ、いいところに来た。実はアレコレ」

青年の瞳がキラリと光る。ふところから取り出したのは撮影用スフィア。
「リュック、ポ〜ズ」
「やっほ〜」     パシャッ!

おっさんの上に巨大獣人、そしてなぜか さらにその上にのっかってポーズを極める美少女。・・・・・作品の題名はつけようもない。


以後、シンとの最終決戦の時まで、伝説のガードはパーティの誰にも酒を勧めることはなかったという・・・・・。



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