そして・・・昨日の慣れない砂漠の行程で疲労した身体をゆっくり休め、遅めの朝食を取っていたアーロンとキマリのところへ、顔を紅潮させたリョックが飛び込んできた。
「いたいた。おっちゃん!仕事、仕事。ほら、謎解きに行って、行って!!」
「・・・・??・・・・」
「俺はダメなんじゃなかったのか?」
「ん〜〜〜もう水泳の方はおわったからぁ。」
リュックちゃん、ジタバタ ジタバタ。
アーロンの心の声:いや、俺だって、戦闘時により有利だから3人にまかせるのであって、水練自体ができないということじゃないのだが・・・。
ふと見やると、メモ用紙とおぼしき紙をヒラヒラと示して、ティーダとワッカが2人においでおいでしている。
「あたし、飛空艇の移動頼んでくるからね。」
リュックは返事もまたずに食堂を飛び出して行った。
『雷が絶え間なく降り注ぐ場所にて、マカラーニャを背に4つめの塔の右側を見よ』
メモ用紙に記された文を読んだとたん
「あ・・・。」
「・・・だな。」
2人は、これ以上ないくらい納得してしまった。
「リュックが、ここだけは、ど〜してもヤだって ゆずらないっス。」
さもありなん。期せずして食堂に笑い声が響いた。
「ずいぶんと楽しそうじゃない?」
扉が開いてルールーが声をかける。
「じきに、雷平原の旅行公司に着くそうよ。」
「あ、ルールー。」
ティーダが、ちょうど良かったとばかりに、手荷物をゴソゴソとかきまわすと、1つの人形を取り出した。
「さっき、例の寺院の一角で鏡が反応したから調べたら、ホラ、これ。」
「いわくありげだったんで持ち帰ったんだが・・・どうだ?使えそうか?」
ルールーの瞳が輝く。よりによって、武器として謎多きぬいぐるみを使用する彼女にとっては何か感ずるものがある人形だったらしい。
「ありがと、ワッカ。調べてみるわ。」
極上の微笑み。さりげないしぐさで、ワッカのホッペに軽いキス1つ。
「なんか、お約束だものね。感謝のしるし。」
「お・・・おぅ!!」
とたんに期待して、お姉さまをみつめる わかりやすい青少年1名。
ルールーは、思わず苦笑するとティーダのおでこにチュッとキスをした。
「エ〜〜。」
不満な声。
「なんでオレのは、おでこぉ?」
「ふ〜ん。この先は、もうちょっと男のレベルを上げてからの話ね。」
「男のレベルって、なんスか?!」
「そういうこと言ってる間は、低いものよ。」
「う〜〜〜。」
やめとけ、勝てないから・・・3人の男たちは心の中でつぶやいていた。
雷平原の避雷針として立ち並ぶ塔を調べに出向いた一行が入手したのは、またしてもパスワードだった。
「む・ら・さ・め・・・?」
一様に首をひねりながら帰還した一行を出迎えたのは、奇妙に緊張感あふれるブリッジだった。
「1000年前の機械だ。仕組みなんて分からねえから 何も聞くんじゃねえぞ!」
と、かつてシドをして言わしめた飛空艇の制御機器のまわりに、何人ものブリッジ要員が集まって真剣な表情で作業を続けている。そして、
「モッキャワ!!」
だれかの歓声と同時にいくつかのモニターパネルにパァーッと光が走った。
大歓声。
「おい、ルー、何がどうなってるんだ?」
「ん〜、詳しいことは私もわからないんだけれど、この艇って かなり大きいでしょ?着陸できる広い空間がある場所はいいけれど、どこにでも空き地があるとは限らないわよね。」
「・・・・・・・・。」 うんうん
「それで、何やら特殊な移動方法を使って乗員の乗り降りができる装置が組み込まれているわけよ。」
「おう、オレらも、結構使わしてもらっているアレだな。」
「そう。それなんだけれど、移動先のリストを調べていた技術員が、かなり多くの移動先が、まだ死んだままで作動していないと言い出したのよ。」
「ほう・・・」
「で、何とかそれらを生き返らせる方法がないかと悪戦苦闘していたらしいんだけれど、どうやら上手くいったみたいじゃない?」
「なるほどぉ。」
バラバラっと自分の持ち場へもどったとおぼしきブリッジ要員達が、なおも かまびすしくやり取りをしている。
「チオフオ ワエ、ハンセミッサッテ プヌカーゴ(昨日のあれ、何ていったっけパスワード)」
「び・く・と・り・あ・す」
「カアッサ びくとりあす ガハ(わかった。びくとりあすだな)」
左手でボリボリ頭をかきむしりながらパネルをいじくっていた男が、ヒョウと口笛を鳴らした。
「ガミヘミアミガゲ(大正解だぜ)」
パチッという操作音とともに中央にスピラの全体地図が浮かびあがり、その1箇所に明るい光が点滅している。
「なに、なんなの?」
「行き先が増えたみたいね。ここ・・・ビサイド島じゃない?」
「おぉ、ビサイド島だ。あれ?なんでだ?まわり一面海で、降りるところなんて探す必要なさそうなのになぁ。」
不審げなワッカ。
「トミ、サレキシ ヨミユコ テンラルキセ ルエハミア?む・ら・さ・め ソミフオガ。(おい、ためしに こいつも検索してくれないか?むらさめ というのだ)」
「む・ら・さ・めベヌメ、あーろんラン(むらさめですね、アーロンさん)」
男がパネルを操作すると、今度は別の光が点滅を始めた。
「ここも、ビサイド島みたい。」
ちょっとした沈黙が場を包んだ。
「行ったことのない場所に行けるようになったんだろ?考えることないっス。行くっス!!」
お前の方が、よっぽど短絡思考で動いてから考えるタイプだぞ・・・とアーロンは思った。
ティーダとリュックが移動用機具のところに立つと、まわりをチラと見たワッカが名のり出た。
「じゃ、オレもちょっと行ってみるワ。生まれ育った島に知らない場所があるとも思えないんだが・・・」
3人がパスワードをもとに移動を試みたすぐ後、飛空艇はちょうど空いていたビサイド桟橋に着水。ユウナ達4人は外へ出た。
「ワッカさん達、どこに降りたのかなぁ。」
「かなりビサイド村に近い位置のようだったがな。」
「・・・・・・・。」
なんとなくキマリがそわそわとしている。
「どうした?」
「・・・・・・・。」
キマリは何か言いたげで、でも ふんぎりがつかないらしい。
アーロンは太刀を気楽に肩へ担ぎ上げると
「行くぞ。」
と一言。ビサイド村に向かってサッサと歩き出していた。
一時的な浮遊感の後、ティーダ達3人が降り立った場所は、少々視点に違和感のあるビサイド島だった。
「・・・?・・・」
「どこだっけ?」
直後にけたたましい悲鳴が上がった。
「リ、リュック?!」
「走っちゃダメェッ!!」
「え?!」
「下っ・・・下。」
リュックの指が足元をさしている。
「下・・・って、ゲッ!?」
さほど広くない足場をちょっとはずれると・・・地面がなかった。
「チョォ、ここ どこだって?」
足元を確認しつつ、まわりを再確認したワッカが
「ラクガキ遺跡の上か・・・」
ようやく自分達のいる位置を確定した。
「ラクガキ遺跡って?」
「ビサイド村を出てすぐのところに昔の都市の残骸だといわれている古代遺跡があって、そこにアルベド文字のラクガキが彫り付けられているんだ。」
「あ〜アレっすか。」
「ここは、その遺跡のてっぺんというわけだ。」
「高!」
「ふう〜ん。」
どうやら簡単に崩れ落ちるような足場ではなさそうなことをたしかめると、リュックは、見慣れぬ角度から眺める故郷に感慨深げなワッカをそっちのけで、あたりをゴソゴソと探索し始めた。そして、ほどなく
「ア〜〜ッ!」
楽しげな声を張り上げて、遺跡に絡みつくツタ蔓の茂みから半ば朽ちかけた箱をひっぱり出した。
「なぁにが入ってるかなァ〜。」
「開くのか?」
「まっかせなさァい。」
リュックはしばらく鍵穴と思しき物を調べていたが、ほどなくニンマリとしてティーダを見た。
「あけるよォ。」
シュルっという音をたてて開いた箱の内側は、外観とは違って充分中身を守りうる状態だった。リュックの手が幾重にも重ねられた薄い布をそっと取り除いていく。そして
「わぁ〜〜。」
彼女が手にしたのは、緑色を基調とした花を連想させる女性用とおぼしき防具だった。調べるリュックの顔つきが見る見る興奮していくのがわかる。
「ねェ、これ もらっちゃってもイイんだよね。」
「ん?いいんじゃないっスか?持ち主いそうにないし。」
「スピラのために役立てるんだ。もらっちまえ。」
「うん!」
装備してみたリュックから鼻歌がもれる。
「それ、すぐれものだったのか?」
「バッチシ!!属性のある魔法攻撃のダメージをいくつも無効化してくれる力が働いているみたい。あったしが使うっと。」
「よかったっス。・・・ん・・・?アリ・・・?」
「どした?」
ティーダが しきりと首をひねっている。
「オレさ、今なんか ひっかかるもの感じたんだよね。アレ?・・・なんだっけ・・・」
なんか すぐここまで出掛かっているのに正体のわからない妙な感じ。ティーダはイライラっと髪をかきむしった。
その時、茂みの向こうでガサゴソと草を掻き分ける音。
「え?!」
思いもかけない位置の草がゴソリと動いてヌッと現れたのはキマリだった。
「キマリ!!どこから出てくるのよぉ。」
「っつうか、ここって下から登ってこられる場所だったんかい?!」
考えてみれば、移動用装置がそこにあるということは、かつて そこに装置を設置した人がいるということ。設置するために登ってくるルートがあったとしても、なんら不思議ではない。(長い年月の間に島の住民にすら忘れられてしまった道であったとしても)
キマリがひょいと後ろを向いて腕を差し出すと、それをたよりに草を押しのけながら上がってきたのはアーロン。
「ほう、こんな場所にでるのか・・・」
「キマリ〜、おっちゃん、見てみて、これ戦利品。」
「ん?何か見つけたのか?」
「・・・・・・。」
なんか一人だけ ますます複雑な表情のキマリ。
「あれ・・・?」
それを見て、さらに首をひねるティーダ。
ちょうど その時だった。足元はるか下から明るく呼びかける声。
「ワッカさぁん。キマリとアーロンさん、着いた〜?」
「ユウナ、ルー・・・」
見ると下の道から、ニコニコと手を振るユウナとルールーの姿。とたんにティーダが、すっとんきょうな声を張り上げた。
「あ〜っ!!」
「なっ、なんだ?!どした?!」
「キマリ!!」
ギクリとキマリが1歩ひく。タタタとつめよるティーダ。
「ここだったよな。ビサイド島を出発するって朝、キマリここからオレの前に飛び降りてきて、腕試しだかなんだかしらないが、いきなりケンカふっかけてきたんだったよな。」
「・・・・・・・。」
キマリ君タジタジ・・・。
「キマリ、ここの場所 登れたんだよな。あの防具のことも知ってたんじゃないのか?!」
「え?!」「あ?!」
「なんで、持って飛び降りてこないんだよ。あれがあったら、オレ達もっと旅が楽だったかもしれないのにぃ!!」
「あ、いや、あの・・・その・・・」
どうやら、どんな言い訳も通りそうにない様子だった。
夕食後、すっかり日の落ちた暗闇の中、飛空艇を後にする人影が1つ。
「おい。」
突然呼び止められて、人影はピクリと肩を動かした。
「ウォータープリンでも探しに行くのか?キマリ。」
「?!・・・アーロン・・・なぜわかる。」
キマリは小さなため息とともに武器をダラリと下げた。
「たしか、あいつがまれに持っていたからな。集めてリュックにプレゼントするつもりか?」
「・・・・・・・。」
キマリは小さくうなづいた。
「ガガゼトで使われている防具とは、まるで趣の違う物だった。特別の力が働いている物だとは、まったく知らなかった。だから、今まで気にもとめていなかったのだが、あんなにリュックが喜ぶ物だったのなら、もっと早く手に入れてやれればよかったという気がしている。せめて{龍のウロコ}を集めて防具の力を強めてやりたい。」
注:龍のウロコ(消費アイテム)ウォータープリンから時々入手できるアイテム。スプラッシャーにわいろを使っても入手可。改造によって「水無効」のアビリティをつけることができる。
シードラに持たせて通信交換するとキングドラに進化させることができるアイテム・・・って、それはゲームが違うって!
「ふむ。じゃ、行くか。」
アーロンは、真新しい太刀を肩に担ぐとスタスタと歩き出した。慌てて後を追うキマリ。
「行くかって・・・?」
「一人より二人の方が物集めは効率がいいだろう?」
「わざわざ つきあってくれるのか?」
「まぁな。」
アーロンは太刀をチョイチョイと動かした。
「こいつの礼だ。おまえが居なければ見つけられそうになかっただろうからな。感謝のしるしというヤツだ。」
たぶんニヤリとしたのだろう。キマリの口元がピクリと動いた。
「なんだったら、キマリはおでこにチュウでもかまわないのだが。」
「ほう。遠慮がちだな。オレはお前のレベルをもう少し上とふんでいたんだが・・・(笑)」
当分この人には勝てそうにないな・・・キマリは苦笑しながら道を急いだ。
ちょうど そのころ
[[とにかくぅ、思いつくもの かたっぱしから入力しちゃってみてよ。あと、絨毯爆撃で地表軸を検索する!!]]
[[いや、リュック、そんなムチャを言っても・・・]]
[[数撃ちゃあたるもンなの!次は、かっこいい武器見つけ出すんだからぁ〜]]
本日の成果に気をよくして、ブリッジ要員達のシリをたたきまくる大ハリキリのリュック。
「見つかるまで続けるつもりなのかしら?」
「なんか、そうなるみたいっス。」
ポソポソと言葉をかわしあうユウナ達の後ろで、タメ息とともにシドさんが頭をかかえこんだのは、お気の毒と言う以外なかった。
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